梅雨明け後の猛暑の次は、梅雨が戻ってきたかのような曇り空。今日は七夕ですね。ところで、「七夕」って秋の季語だと言うこと、ご存知でしたか?
さて、もう夏なんだか、梅雨が戻ってきたのか、え?秋?さっぱり季節が分からなくなっちゃいますが、
地歌箏曲には「秋の初風」と言う曲がありまして、これは宮城道雄先生の作品です。歌詞は「平家物語」の「祇王(ぎおう)」を歌ったものです。簡単なあらすじは、
『平清盛に愛された白拍子の「祇王(ぎおう)」は、自ら推挙した白拍子の仏御前に、清盛の寵愛を奪われ、母・妹と共に嵯峨の往生院に身を寄せ、尼となりましたが、後に仏御前も、この祇王の庵を訪ね、同じく仏の道に身を捧げ、往生する。』と言う物語です。
先日、矢来能楽堂の前を通りかかりましたら、平家物語「祇王(ぎおう)」をとても分かりやすくイラストにしたものが貼り出されていました。
さて、この物語と七夕が何故紐づくのか?と言いますと、この地歌箏曲「秋の初風」に「星合の空」と言う歌詞が出てきます。
「星合の空」って、「織姫と彦星の空」七夕って事ですよね?この曲を習った頃には、「秋の初風」なのに、何故七夕が出て来るのか、季節感めちゃくちゃね…。と思ったのですが、後に自分の無知を恥じたのでした。
七夕は秋の季語。そして、この曲の歌詞はとても美しいのです。ほんの少しご紹介。
『一樹の陰に宿りあい、同じ流れを掬ぶ(むすぶ)だに、別れ悲しき習いなり』
(一本の樹の陰に雨宿りし、たまたま一緒に同じ流れの水をすくって飲んだ相手とでさえ、別れは悲しいのが人の世の習いである。)
『秋の初風吹きぬれば、星合の空眺めつつ、天の戸渡る梶の葉に、思う事書く頃なれや』
(秋(「飽き」とも連想される)の初風が吹いたので、七夕の空を眺めながら、天の川の舟の通い路を渡る舟の、その梶の木の葉に願い事を書きつける頃だろうか)
『佛御前(きみ)はさんげもさめざめと、一つ蓮(はちす)の身となりぬ』
(仏御前の君は、懺悔の言葉もさめざめと、泣きながら語り、祇王の家族と同じ極楽の蓮の花の上に生まれ変わったと言うことである)
こんな美しい歌詞を、琴と三味線と尺八の音色に乗せて、歌う訳です。素敵〜。楽器を奏でる事、季節の歌を歌う事って、本当に楽しいです。弾き語りの和の文化、これからもずっと残って欲しいと願っています。
写真は、和歌で有名な藤原定家の家系、冷泉家の七夕行事、乞巧奠(きっこうでん)の祭壇「星の座」です。水を張ったタライに星を映して眺めるそうです。五色の布と願いの糸が飾られていますね。
青は「徳を積む」赤は「父母や先祖への感謝」黄色は「信頼」白は「義理や決まりを守る」黒は「学業の向上」梶の葉には思う歌を書いて手向けるのでしょうか。
織姫はこと座の1等星・ベガで、彦星はわし座の1等星・アルタイル。
織姫様はとても手先が器用だとか。最近は織姫様にあやかって、大原御幸の法皇の輿を担ぐ、担ぎ手だったり、護衛の従者達のミニチュア衣装をチクチク縫っています。
休憩時には、「想い橋」と言う名の星形あられと、とも栄さんの「MIO」と言う星の形の琥珀糖、お友達に頂いた紫陽花のカップでコーヒーを頂きます。
私には、7月7日生まれの「美緒」ちゃんと、8月生まれの「織内さん(おりちゃん)」と言う学生時代のお友達が居ます。
七夕に結ばれる美しい五色の糸の「美緒」ちゃん、お誕生日おめでとうございます。
「おりちゃん」はもともとお姫様みたいな方ですから、この季節は美しいお二人の事を思い出します。
旧暦で言うと、お二人とも秋生まれなのですね。コロナ禍でずっと会えないままですけれど、そろそろお会いしたいナ。
しかし今日は、さーさーのーはーバークバクー♪ぱーんーだーがーターベーター♪と、鼻歌を歌いながら、やや曇りの空を見上げる夜となりました。