• 東京・新宿・奥神楽坂にあるお琴教室・三味線教室

まだ6月なのに、とっても暑い日があったり、

梅雨らしい雨が降り続いたり、なかなか洗濯物の管理が難しい日々です。

皆様はいかがお過ごしでしょうか?

この季節、とても楽しみにしている事があるんです。

それは…。

クチナシの花。

お散歩コースに、とても大きなクチナシの木があるのです。

甘くて濃厚で、独特な香り。雨上がりのこの芳香に、うっとり。

しかも、見上げる程大きなクチナシの木というのは、私はこの木以外に知りません。


そして、ふと思いました。

日本ではどれくらい昔から、このクチナシの香りを愛でていたのかしら?

んー、ちょっと考えて思い出したのが、源氏物語の「夕顔」の物語でした。


六条御息所が、光源氏を想い、生霊となってさまよい出る時に、

庭に咲き、むせ返るような香りを放っていたのがクチナシで、

光源氏は、その香りで生霊の主を悟る。

確かそんな感じだったのでは…?

その後、光源氏と一緒に居た夕顔は、亡くなってしまうのですが、

ひっそりと供養された事と、クチナシ=口無し

が掛けられているらしいです。

んー。源氏物語では、少し恐ろしい要素を含む花の香りのようですが、

その香りの濃厚さと六条御息所の想いの深さがピッタリだったのでしょうか。


話は変わりますが、フランス有名ブランドのシャネルに、

「ガーデニア」という香水があります。

日本では販売店舗がとても限られているのですが、(新宿の伊勢丹と、銀座の路面店にはありました。)

ガーデニアは、クチナシという意味なんですって。

わたしはこの香水の香りがだーーーい好きです!

確か、この香水が発売された当初は、天然成分の含有率が高く、

しかもその成分の多くに、日本産のクチナシが使われていたと聞いたことがあります。


さて、話があちこちしますが、

源氏物語の「夕顔」、お琴と三味線の世界にも、「夕顔」という曲がありますよ。

私にとっては思い出深い曲なのですが、その話はまたいずれ。

『住むは誰、訪ひてや見んと黄昏に、寄する車の音信(おとづれ)も

絶えてゆかしき 中垣の 隙間求めて 垣間見や。

かざす扇に 焚き染めし 空薫きものの ほのぼのと 主は白露 光を添えて

いとど栄えある夕顔の 花に結びし仮寝の夢も 覚めて身にしむ 夜半の風』


源氏物語の中でも良く知られたお話の一つかと思いますが、

私が好きなフレーズは「主は白露、光を添えて」というところです。

色んな解釈があると思いますが、私が感じるのは、

いつの時代も、花を贈るというのは、光を贈ると言う事なのだなあ。という事でした。

クチナシと夕顔。

儚く可憐な白い夏の花に、色々おもう夜でありました。