• 東京・新宿・奥神楽坂にあるお琴教室・三味線教室

12月のある日、六本木の国立新美術館へ行って参りました。

さて、何でかと言いますと、私がお世話になっているお琴やさん、文京区本郷「小川楽器店」の店主、小川さんが作ったお琴が展示されていたからです。

入り口を入って直ぐに発見です。

↑このお琴は、雅楽で使われるお琴で、私が使っているお琴ととても似ているのですが、装飾の部分やお琴に付いている足の高さだったり、少しだけ違います。

↓下の写真が私のお琴。

細かい違いを言ったら、色々あるとは思いますが、大きさや絃が13本である事、音の響きなどは、ほぼ同じと思われます。

でも、雅楽用のお琴の装飾の美しさと言ったら、これはちょっと素敵かも。

先日、小川さんのお店に行った時に、仕上がったばかりのこの楽器を、近くで見せて頂いたのでした。

龍や鳳凰、鶴やお花の装飾が至るところに施されています。琴柱に使われている白い部分は鯨の骨なんだそうです。昔は象牙で装飾されていたものだそうですが、今は象牙がとても入手しにくいものになっているので、大きな鯨の骨を利用しているそうです。

指にはめているのは、雅楽用の琴爪。爪がとても小さいのですね。銀色の爪の輪の部分は、外側が犬の皮、内側が猫の皮なんだそうです。指先の形に合わせたオーダーメイドなんですって。

装飾が美しい事にも十分な価値があると思うのですが、びっくりするのは、このお琴そのものを小川さん自身が制作されていると言う事です。

お琴は、糸が切れると普段お付き合いのある、購入したお琴屋さんに糸を締め直してもらうのが一般的なのですが、そのお琴を販売しているお琴屋さん自らお琴を制作してると言うのは、あまり聞いたことがありませんでした。

そして小川さんのお店では、こんな素敵なお琴を製作中でした。

なんと、一絃琴。表面には千鳥の形の木目込み細工。これがフレットの代わりなのだそうです。この一絃琴は、琴柱を立てずに、左手で絃を押さえて音程の調整をしながら、右手で糸を弾いて奏でるのです。

こんなお琴まで作っているなんて、もー驚いちゃって、小川さんのお琴への愛情深さを感じました。

宮尾登美子さんの小説、「一絃の琴」をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?ご興味ありましたら、是非。宮尾さんファンの私としては、何度も読み返したくなる一冊です。

実は小川さん、凄い方で、次回の伊勢神宮式年遷宮で、ご神宝として納めるお琴、鵄尾御琴(とびのおのおんこと)を制作されたのです。このお琴は巨大なんだそうで、音の響きも、何とも言えない深い響きがするのだそうです。でも残念ながら録音の許可が下りなかったそうです。

それと言うのも、このお琴は、天照大神だけが弾くことの出来るお琴。なんだそうです。うーん、なるほど…。↓画像は博物館のものをお借りしました。

実は小川さん、宮内庁にも出入りしていて、全国の神社の和琴のメンテナンスにも飛び回っている方で、文部科学省から選定保存技術者に認定されております。

日本の文化財の保護に大きな貢献をされている方なんですね。

そしてもう一つ発見!

小川さんの背後に、何気なく立てかけられているお琴ですが、実はこれ、かつてのお嬢様のお嫁入りの持ち物なんだそうで、いたる所にべっ甲の装飾が見られます。白い部分は全て象牙でしょうか。写真では見えませんが、お琴の側面にも一面にべっ甲が貼られているのです…。実用的なお琴ではありませんが、かつてのお嬢様は、お嫁入りのお道具として、家一軒分の価値のあるものを持って行かれたそうです。

ただいま修理のために、偶然小川さんの所にあったものを拝見させて頂きました。これと同じものを小川さんは作りたかったそうなのですが、値段を見積もった時点で、諦めたそうです。

そんな小川さん、私の楽器のメンテナンスにも、気軽に足を運んで下さいます。楽しいお話もいっぱい聞かせて下さって、溢れんばかりのエネルギーをお持ちのチャキチャキの江戸っ子とでも表現できましょうか。

11月の演奏会前にも、糸を張り替えてもらい、その他にもお琴4面程調整をして頂いて、その弾きごごちの良さと、音の響きの良さは、「さすが小川さん!!」です。これからもどうぞ宜しくお願いします!!